ウィークエンドのブックエンドと『THE BOOKS 365』
本が好き、と言うだけで話が止まらなくなる。
金曜日、堀江敏幸さんが好き、と言われときめき、土曜日、梶井基次郎の『檸檬』が好きと言われ興奮し、吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』が好きと言われ感嘆し、エンデの『モモ』で本が好きになったと言われ、わーと唸る。
カール・ラガーフェルドの作品集と『ビジュアルコンプレキシティ』を交換してくれた人、北園克衛の『VOU』に興奮してくれた人、中上健次が好きな人は、『移民たち』を買ってくれた。
かもめブックスさんから預かった『高円寺純情商店街』と伊坂幸太郎の本を交換した。
いろんな人と話をしていて、ブックリストを作りたい、そう思って作ったのが、きっとミシマ社の『The BOOKS 365』なんだろうな、と思ったウィークエンド。
友達が主催したフリーマーケットのブックエンド前で。
THE BOOKS 365人の本屋さんがどうしても届けたい「この一冊」
- 作者: ミシマ社編
- 出版社/メーカー: ミシマ社
- 発売日: 2012/08/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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かもめブックスと『2666』
まだ、かもめブックスができてなかった頃、『2666』を教えてくれた店員さんがいた。
かもめブックスができるタイミングで、彼女はかもめブックスに転職した。
ジャン=クロード・ペルチエ素子が、初めてベンノ・フォン・アルチンボルディ劇場に設置されたのは、1980年のクリスマスのことだった。
若きベルチエの悩みは、彼の無知、空白もしくは書誌的な怠慢は彼が若すぎたせいであり、コードがもたらした眩惑と感嘆は少しも損なわれていなかった。
彼はハンバーグにある『ダルソンバル電流』の開発元へ手紙を書き送ってみたが、なしのつぶてだった。パリで見つけた数少ないドイツ系販売店を片端から訪ねて回ってみた
かもめブックスのオーナーは校正会社の鴎来堂のオーナーでもある。
訳者や小説家たちの間違いを、正しく導く。
少しの間違いが、物語をあらぬ方向へと向かわせ、書き出しと終わりを崩壊させたりもする。
名詞を科学的に解釈しようとする、無理矢理な翻訳家がいたら、『2666』は熱伝導による発電の物語に姿を変えていたかもしれない。
それはそれでも読んでみたいけど。
『2666』は5つの物語が、連続婦女殺人事件を軸にしてすすんでいく。マジックリアリズムと呼ばれる小説の分野なのだろうか。それぞれの物語の主人公たちは、僕たちのいない世界のどこにでもある物語を描いている。
- 作者: ロベルトボラーニョ,野谷文昭,内田兆史,久野量一
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2012/09/26
- メディア: 単行本
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ジュンク堂池袋本店と『Processing』
2001年MITメデイアラボで、Processingは開発された、プログラミング言語であり、統合開発環境である。開発者はケイシー・リースとベンジャミン・フライの二人だった。Processingは、アーティストやデザイナーのために開発されており、難解なブログラミング言語を直感的に習得しやすくなっている。
Processing を知ったのは、2007年だった。今の編集長がよく分からない企画をプレゼンし、強引に通したのを今でも覚えている。その時、Processingの本はまだ世界に一冊も出ていなかった。
その本はよく売れた。
初版は贅沢を極め、そのままの形では重版ができなかった。
バージョンに合わせて改訂、重版を繰り返してきたその本も少し役目を終えつつある。
当時と比べると、プログラミングによってビジュアル表現を行うことは随分と市民権を得てきたように思う。
チームラボやライゾマティクス、スプツニ子!などのアーティストが牽引してくれたおかげだと思う。
ジュンク堂池袋本店は、昔からプログラミングによるビジュアル表現を応援してくれていた。いまだマニアックな世界でなかなか売上に繋がらない時もある。それでもいつも前面でそれらの本を押してくれていた。
お客さんに開発者が多かったこともあり、特異な僕たちのポジションを割と応援してくれていたように思う。
先日発売した『Processing』は、まさにバイブル的な本になる。何のバイブルかというと、Processingはもちろん、まさにプログラミングによるビジュアル表現者たちのバイブルだと思う。
著者はProcessingの開発者、ケイシー・リースとベンジャミン・フライ。
前書きは、二人の恩師でもあるジョン・マエダが日本語版のために書き下ろしてくれた。
ハードカバー、700ページを越え、重量1.2キロ。価格は7000円の少々高めな鈍器ではあるが、買って損はない。
Processing:ビジュアルデザイナーとアーティストのためのプログラミング入門
- 作者: ベン・フライ,ケイシー・リース,中西泰人,安藤幸央,澤村正樹,杉本達應
- 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
- 発売日: 2015/09/20
- メディア: 単行本
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Built with Processing ?デザイン/アートのためのプログラミング入門
- 作者: 前川峻志,田中孝太郎
- 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
- 発売日: 2007/03/26
- メディア: 単行本
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BOOK TRUCK と『ぼくはくたばりたくない』
山形から帰ってきたけど、家の鍵を忘れた。
なかなかどうでもいいけど、マン喫で満喫。
東京では大型連休に本のイベントがたくさんされていた。雑司が谷やTABF。東京ミッドタウン。
山形の川西フレンドリープラザで至極の時間を過ごしたので、東京に着くのが遅くなった。さすがに全部は回れないと思っていたけど、一つ回るのもギリギリな時間。東京ミッドタウンへ足を伸ばすことにした。
東京ミッドタウンに着くと、芝生の上に寝転ぶ人の群れがあった。傾いた太陽の日差しが柔らかく、風が気持ちよかった。
イベントは質素だった。木材で作られた棚の上に本が並んでいる。ブックトレード、販売、貸し出し。構成はこの3つだけだった。
来られている人の多くは、たぶんそこまで本を読んでない方たちだろう。少ない構成はかえって、来られていた方に楽しみ方を明確にしていた。
BOOK TRUCKが販売に来ていた。
店長と少し話をしていた。
今は心地いいですが、昼間は日差しが強くて大変だった、と店長は語られた。確かにそうだ。ついつい、物事の一つの側面だけを見て判断してしまう。
涼しくなった芝の上を見ながら、いい時に来れたのだなと思った。
昔、港北ニュータウンに販売に来てる時、ボリス・ヴィアンの『ぼくはくたばりたくない』を買った。
ページを開かず少し眠らせていた。
ぼくはくたばりたくない
夢も見ずに眠っている
メキシコの黒犬たちを 知らずには
『ぼくはくたばりたくない』 ボリス・ヴィアン
もう少しでくたばりそうな軟弱な僕のが、夢見て眠っている、東京ミッドタウンのカップルたちを、羨ましそうに見ている。
日差しはもう暖かくないし、風は冷たくなってきた。
17時で終わるイベントの撤収が始まる。
ぼくはまだ、くたばりたくない。
そんな風に心で思うと同時に、『まだ』という副詞をつけた自分のことを思う。
だったらいつかくたばってしまいたいのだろうか。
生まれながらに体の弱かったボリス・ヴィアンには、たぶん『まだ』の景色は見れない。弱くて、現実にエクスキューズをつけながら生きていく景色を。
ぼくは、ボリス・ヴィアンが亡くなった年齢をすでに越えている。
くたばりたくない。
- 作者: ボリス・ヴィアン,伊東守男,村上香住子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1981/10
- メディア: 単行本
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遅筆堂と『居ごこちのよい旅』
山形から神奈川へ帰る日、川西町にあるフレンドリープラザによった。
そこには、井上ひさしの蔵書が置かれた図書館、遅筆堂文庫がある。
5月だっただろうか。BOOK BOOK OKITAMAという本のイベントで知り合った方が働かれてる。
機会があえば伺おうと思っていた。
ちょっとわがままを言って、井上ひさしの蔵書が眠る書庫に入れさせてもらった。学芸員のかたからお話を伺いながら拝見させてもらう。井上ひさしの凄さに言葉が見つけられない。
山形県の最南部を置賜地方という。
米沢を中心にした、四方を山に囲まれた盆地になっている。
川西町は、盆地の中央に位置している。稲穂が重そうに頭を垂れていた。秋なのだなあ。
深夜バスで帰るつもりだったが、シルバーウィークの煽りを受けて、深夜バスも新幹線も大した価格差がなかった。新幹線で帰ることにした。
旅の道連れは、『居ごこちのよい旅』にした。
旅は一人一人の小説なようなもの。出会うもの、触れるもの全てが出来事になる。
光がいつもより鮮やかに見えたり、物が際立って見えたり、人がいきいきと見えたりする。
高校時代によく走った山へ登った。
置賜盆地が一望できる。秋晴れの澄んだ空に、白い雲が伸びている。
黄色い田んぼが一面に広がり、中心にには最上川が流れている。
なんて美しい土地だろう。
住んでいるときには、気づかないものなのかもしれない。
イザベラバードがこの土地を東洋のアルカディアとよんだ。僕は西洋のことをあまり知らない。西洋にはこれを超えるアルカディアがあるのだろうか。
- 作者: 松浦弥太郎,若木信吾
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/03/09
- メディア: 単行本
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- 作者: イザベラバード,Isabella L. Bird,高梨健吉
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2000/02
- メディア: 文庫
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高校時代の思い出と『ウルトラマラソン』
山形に帰ってきた。
友人の結婚式に出ると、昔のことばかり思い出す。
陸上部だったころ、毎日走っていた。学校へ行って走り、家に帰って走った。
休みの日は、部活が終わった後、よく家の近くを走った。
当時は、箱根駅伝に出たくて、箱根の山を走りたかった。
だからよく、山の中を走った。
高校時代、全然足が速くなれず、ウルトラマラソンを走りたいと思うようになった。ただ、ただながく走る競技。
高校を卒業して、大学は走ることだけをした。競技がつらくなった。
ながく、ながく走るようになった。
家の棚には、高校時代に買ったランニングの本がちらほらある。窓社から出ている『ウルトラマラソン』という本に憧れてた。
調べたら、日本で初めて出版されたウルトラマラソンの本らしい。そうだよね。15年前、ウルトラマラソンなんて、間寛平以外、日本で注目されてなかったもん。
窓社は写真集を多く出版している。
面白そうな出版社だった。窓社すげー。
東京へ帰ったら連絡してみようかな。
ウルトラマラソン―人はどこまで走り続けられるか (WINDOW SELECTION)
- 作者: 西村正和,津川芳己,森川清一,山西哲郎,吉川節郎,遠藤栄子,村松達也
- 出版社/メーカー: 窓社
- 発売日: 1992/06
- メディア: 単行本
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石川啄木と東北、アンジェビュロー上野店
ふるさとの 訛りなつかし
停車場の 人ごみの中
そを 聴きにゆく
《石川啄木》
山形へ帰ります。
上野です。
エキュートはまだ閉まっていて、誰もいない。
アンジェビュロー上野店は、アンジェの中で一番売上がいいらしい。
明正堂アトレ上野店は坪単価の売上が日本で一番だと聞いたことがある。今はどうなのだろう。
福島にいた時はたまに上野へ来ていた。今はまるで来ない。もう、訛りが出るのも少なくなった。
- 作者: 石川啄木,久保田正文編
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1993/05/17
- メディア: 文庫
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