本のこと、はしること、山形県のこと。

本と本屋さんのことを中心に書こうと思ってます。走るのが好きです。山形県出身です。内容をちょっとづつ調整していってます。

安田記念の第四コーナー

スタートしてから、すぐに先頭に立ち、ゴールまで一度も誰の背中も見ない。
理想的で綺麗な勝利
陸上部で長距離を走ってた頃、何度も試みた。その度、ラスト一周でズルズルと最下位まで落ちていった。

堀江敏幸の『いつか王子駅で』はそんな理想の勝利を追う。

いつか王子駅で (新潮文庫)

いつか王子駅で (新潮文庫)


物語の中で競馬の話はそれほどないのに、逃げ馬の背中が脳裏に見えてくる。
第四コーナーで毎回ズルズルと後退していったツインターボや、第四コーナーで他馬を突き放したサイレンススズカ
逃げ馬は見ていて美しい。


一方、織田作之助の『競馬』は、最終第四コーナーで最後方から最後の直線で全てを抜き去る。

世相・競馬 (講談社文芸文庫)

世相・競馬 (講談社文芸文庫)


第四コーナーまで溜め込んだ瞬発力が全く振るわず、見せ場もなく終わることも多いが、どん尻からまくり上がるときの興奮は言葉にしようがない。
シルクジャスティスブロードアピールのレースは震えが止まらない。





日本の競馬小説といえば、宮本輝の『優駿』だろうが、なんとなくまだ読んだことはない。

優駿〈上〉 (新潮文庫)

優駿〈上〉 (新潮文庫)

優駿〈下〉 (新潮文庫)

優駿〈下〉 (新潮文庫)



エピソードに入り込んだ競馬の景色は好きでそんな小説はよく読む。
一方、『優駿』のような競馬が主体になると、少し距離を置いてしまう。(宮本は好きな作家なのに)
スポーツはいつもそう、小説を越えてしまう。

僕には『優駿』を越える物語を持った名馬がいる。

日本でもっとも人気のなかった二冠馬。
忘れ去られた天才ジョッキーを表舞台に舞い戻した馬。
小さな生産者。小さな馬主。

今日の安田記念は、第四コーナーまで先頭を逃げていたリアルインパクトが、ズルズルと後退していき、大本命のモーリスが長い直線で先頭に立ち、差し切った。

ただ、僕の本命はリアルインパクトだった。