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本のこと、はしること、山形県のこと。

本と本屋さんのことを中心に書こうと思ってます。走るのが好きです。山形県出身です。内容をちょっとづつ調整していってます。

『なぜ、人は走るのか』と高校時代

高校時代に彼女はいなかった。誰とも付き合った事は がなかった。
中学生の頃、学校のマラソン大会で1位を取った。高校へ入学してしっかりした練習をしたら、オリンピックに出れると思っていた。
陸上部に入部すると、全国区の学校だった事を知った。まともな練習には参加させてもらえず、毎日砂利道をジョギングしていた。

同級生の女の子や、年上の女の子がスカートをなびかせて、その道を通る。彼女たちの横顔を見つめながら、補欠にさえなれない自分を恥ずかしく思ったりした。

彼女たちは、なぜだかいつも楽しそうなくせに、下校中、1人で自転車をこいでいるときは、憂鬱そうだった。たまに、ジョギングしてる僕らを見ている子がいた。別に話しかけもしないし、立ち止まるわけでもない。ただ、見ていただけ。
そんな時の彼女たちの顔が好きだった。

数ヶ月ジョギングの日々を終え、ようやく本練習に参加した。初めて参加した練習は気が狂うかと思った。それでも、先輩やスポーツ推薦で入った彼らの半分のメニューだった。なぜ、僕は走るのだろう、と自問した。

それでも毎日走った。来る日も来る日も走った。次第に練習にも慣れてきた。慣れたとはいえ、練習は地獄だったし、いつも後ろを走っていた。
喘ぐようによたよたと走る姿を、同じクラスの女の子がよく見ていた。彼女とは2回くらいしか話した事がなかった。

かっこ悪いな、と思っていた。
前を走る先輩たちは、ストライドも大きく、颯爽とタイムを刻んだ。来年になればあんな風になれるんだろうか、そんな事を思っていた。

高校2年になると、スポーツ推薦で入部しなかった同級生のタイムがのびた。県大会で入賞するレベルまで上がった。一方、僕は後輩たちにも抜かされ、よたよたと最後尾方を走っていた。

なぜ、人は走るのだろう。
苦痛に歪む顔でさらにスピードを上げる選手もいた。最初から全力で走り、気力を尽くしてゴールする戦法をとる選手もいた。僕らは走っていた。バカみたいだった。

陸上部のトップレベルの選手は彼女がいた。彼らは女子たちと楽しそうに話をする。僕は彼らを横目で見るだけだ。ただ、羨ましげに。
高校3年の冬、オリンピック選手にはなれない事がわかった。いや、もうずっと前に分かっていた。目の前には雪が積もっていた。素肌を露出した女子高生たちの足が、寒さに震えている。
吐く息が白い。
街には雪解け用の水が放たれていて、ランニングシューズがびしょびしょに濡れた。引退した先輩がたまに遊びに来る。彼らはもう走っていなかった。

別に理由なんてなくて、ただ、人はずっと前から走ってきただけなんだ。
ダイエットでも健康でも生きるためでも、もてたいからでもいい。
なぜ、僕らは走るだろう。

なぜ人は走るのか―ランニングの人類史

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