夏の日の思い出、少年少女負けるもんか!
今週のお題「読書の夏」
夏は、書を捨てよ、山へ出よ、です。海でもいいと思う。山や海へ行かないと、非リア充として中二病に感染し、永遠に患う恐れがある。今すぐ、隣の席のクラスのアイドルに話しかけて、デートに誘うべきだ。断られたら、隣のクラスのアイドルを誘うべきだ。
でも、たいてい何度誘っても、うん、とは言ってくれない。がんばっていたら報われる。持ち続ければ夢は叶う。そんなのは幻想だ。努力はいつも報われない。カレンダーに刻まれた予定は虚しく輝く。予定だけ抑えた宿や施設のキャンセル料は膨大だ。むしろ一人で行った方がいい。現実の世界ではよくあることだ。スタートはそこからだ。青春18切符を買おう。一人だけの旅だ。予定を消化するためだけ旅だ。昨日までの自分を超えろ。負けるもんか!
始発に乗るために早起きする。駅に着くとホームには人がいない。やってきた各駅停車の電車に乗る。人は疎らだ。カバンから文庫本を取り出す。ページを開く。電車の走る音が響く。窓の外は明るみ出している。
本を読み終わる。まだ、目的地まで時間がかかる。窓の外は、あまり変わらない景色。北上した電車が、聞いたことのない名前の駅に止まる。本の余韻が窓の外とシンクロして、まるで主人公になったような気分になる。
手のひらの画面は彩り豊かな光を放つ。Facebookやインスタグラムのアプリケーションを起動させる。フォローしている友人たちの楽しそうな夏の写真があらわれる。誘いを断ったクラスのアイドルが海ではしゃいでいる写真を見る。水着を着て、友人たちと一緒に笑っている。充実している。そして、アプリケーションを閉じる。一人旅の方が情緒かあっていい、と声に出してつぶやく。とても小さな声で。それでも、乗客の少ない電車の中では少なからず声は響く。イヤホンをしていない乗客の数名が顔を振り向かせ、すぐに視線を外す。
以上のことをまとめると、結論として、どんなに頑張っても、中二病の感染から逃れるすべはない。後天的な病だとされてはいるが、先天的に感染が定められていると言えなくもない。
そんな人にオススメの夏の本はこちら!
沢木耕太郎『深夜特急』シリーズ。本の中ではいつだって大沢たかおだよ。俺たち。夏の読書は一人旅。負けるもんか!
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