本のこと、はしること、山形県のこと。

本と本屋さんのことを中心に書こうと思ってます。走るのが好きです。山形県出身です。内容をちょっとづつ調整していってます。

本が必要だった世界に、世界が見つけられなかった物。

インターネットが当たり前になった。
SNSでコミュニケーションをしたり、情報を得る。
分からないことはWikipedia で調べる。食事は食べログを検索する。

インターネットが当たり前になった時、物を売ることってどういうことだろう。
ほとんどの物は、サイバー空間に収納できる。

物が不要になったら、僕たちは何を買うんだろうか。

僕は出版社の営業をしている。

本という物が何物なのか、考えている。昔みたいな物ではないし、そこに価値を見出している人は少ないんじゃないかな。

クラフトエヴィング商會というデザイナーであり作家がいる。
彼らの本は想像力を形にする。無形の物を有形にするから、魅力がある。物である本が欲しくなる。

星を賣る店

星を賣る店

ないもの、あります (ちくま文庫)

ないもの、あります (ちくま文庫)

どこかにいってしまったものたち

どこかにいってしまったものたち


この本も想像力を形にしている。

パラレルワールド御土産帳

パラレルワールド御土産帳


宝物のように扱う本もある。
ピーター・ツムトアの『建築について考える』は彼の美意識を形にする。だから、物でなくてはならない。意識を形而下に落とさなくてはならないのが彼の仕事だから。

建築を考える

建築を考える


堀江敏幸の『雪沼とその周辺』カブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』、井上ひさしの『吉里吉里人』なんかは、架空の都市が架空に生きているから、本がそのガイドブックになる。

雪沼とその周辺

雪沼とその周辺

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

吉里吉里人 (上巻) (新潮文庫)

吉里吉里人 (上巻) (新潮文庫)

吉里吉里人 (中巻) (新潮文庫)

吉里吉里人 (中巻) (新潮文庫)

吉里吉里人 (下巻) (新潮文庫)

吉里吉里人 (下巻) (新潮文庫)


デザイン業界では、スペキュラティブデザイン、という言葉が注目されている。
今の世界ではない、世界を創造するデザイン。未来に対して「解決」を提示するのではなく、「問い」を提示するデザイン。

もし、本がこの世に存在しないのであれば、僕たちはいまどうなっているだろう。
視覚表現に特化しなかったなら、例えば、触覚を鋭敏に鍛えていたなら、僕たちの文化はどうだったのだろう。

いつも、当たり前のように問題を解決してきた結果、僕たちのテクノロジーは大量虐殺を生み出してしまった。
立ち止まり、本のない世界を想像する。そして、また一から本の世界を作り出す。それは紙ではない本かもしれない。目で愛でる物ではないかもしれない。

前にも書いたけど、
『万人のためのデザイン』がいい。
これからのデザインへ橋渡しする、デザインを問いただす一冊。
展示会の図録だったもの。
人間中心設計から次の産業革命(個人が作り出す世界)までの優れたデザインを集めている。

万人のためのデザイン

万人のためのデザイン

  • 作者: エレン・ラプトン,武舎るみ,武舎広幸
  • 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
  • 発売日: 2015/06/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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本は、物として産み落とされた時、それを手にした人は、どんな価値を見出すのだろう。