延びていく都市、郊外へ。その果てで潰えた色街
そこは内と外を隔てる境界で、内の人と外の人が混在する場所だった。
町田市には青線と呼ばれた非合法の売春街があった。
町田は街の果てだった。
戦後から現代に至るまで、都市への人口流入は増えていった。東京に住む場所はなくなり、外へ外へと街は拡張されていく。
まるで、細胞分裂を繰り返しているように、ステレオタイプの住宅が隙間もなく建てられていく。
街は分裂をする。郊外と都心へと。
住民は郊外に住む。片道一時間をかけて、都心へ働きに出かける。
郊外には女と子供だけが残る。
都市は拡張し続け、やがて、色街は都市の境界ではなく、内へと編入される。
街には女と子供だけしかいない。
色街は立場を弱くしていく。
女と子供は声を張り上げる。警察は動き、色街は崩壊する。
夜、仕事から帰ると、健全な街が生まれる。蛍光灯が夜の闇をくまなく照らしている。
町田が舞台ではないけど、町田に来ると永井荷風の『濹東綺譚』を思い出す。でも、町田の本屋さんにはそんなに置いてなかったなぁ。
- 作者: 永井荷風
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1991/07
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ちょうどオープンして一年がたった、ソリッドアンドリキッドマチダへ行ってきた。カフェスペースもあり、少しずつ認知度が上がってきた、と聞いた。
レジ前のフェア台では、チャートを追いかけて、自分にあった文庫本をお勧めしてくれる。でも、表紙は隠れてある。
雑貨スペースには鉱物が作れるキットセットが売っていた。
夏休みになったら子供に買ってあげようと思う。
本は読むもの、と言われてきた。
ソリッドアンドリキッドマチダは、本を読ませるだけではない。
青い装丁だけを集めたコーナーは、読むというより、飾るもの。
チャート式の本のおすすめは、読ませるというより、感じさせる。
雑貨と一緒並べる本は、体験させるもの。作るもの。
周囲の環境が物の価値、意味を作っていく、と『アフォーダンス入門』という本に書いてあった。
アフォーダンス入門――知性はどこに生まれるか (講談社学術文庫 1863)
- 作者: 佐々木正人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/03/10
- メディア: 文庫
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環境に合わせて、本の価値や意味を変えていく本屋さん。街が変化していくように、本屋さんも変化していく。
あと、店員さんがとても美人だった。そして、とても親切で優しかった。
美男美女(内面もね)を揃えるのも、小売店にとっては大切なことだと思う。