あなたと僕は無関心なまま、きっと互いの欠如したものを満たしている
山形から上京してきて、初めて住んだのは、西巣鴨だった。都電荒川線なら、庚申塚になる。風呂なし、トイレ共同だった。
大学を卒業してから上京したので、友人は一人もいなかった。
定職に就かず、アルバイトとパチスロばかりしていた。
西巣鴨から池袋まで、自転車で10分くらいだった。バイト先も、よく行くパチンコ屋も池袋にあった。
毎日、池袋に通っていた。
その頃、すでに芳林堂はなく、パルコブックセンターはリブロになっていた。
ジュンク堂池袋本店の在庫量に驚き、理解不能に陥る。
その正面にリブロ池袋本店はある。
リブロ池袋本店は西武デパートの中にある。
池袋西武デパートはすごかったんだろうな。
アート専門書店NADiffの前身、アールヴィヴァンも西武デパートにあった。
今はもうない、詩書専門店ぽえむ ぱろうるも西武デパートにあった。
その栄華をもう知ることはできない。
西武ライオンズだって強くないし。
2階芸術書売り場でぱろうるが期間限定復活している。リブロ池袋本店閉店に際してのフェアだ。
かつての残り香が少しだけ感じることができるんだろうか。以前を知らないから、よく分からない。
でも、こんな風に詩集が並ぶのは、気持ちがいい。
しかし互いに
欠如を満たすとは思いもせず
知りもせず、知らされもせず
ばらまかれているもの同士
無関心でいられる間柄
そのように世界が構成されているのは
なぜ?「生命とは」吉野弘
インターネットが無関心を非難する。お互いに繋がりあうことを強要することもある。このサイバー空間にもいずれ生命らしきものは生まれると思う。いや、もう生まれているかもしれない。
ある時、あなたのために、僕はインターネットを開き、
ある時、僕のためにあなたはスマートフォンを見る。
それから、僕は本屋へ向かい、
たくさんの本の中から、何かを見つける。
着まわしの本も通り抜けて、吉野弘の詩集と出会う。
- 作者: 吉野弘
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