本のこと、はしること、山形県のこと。

本と本屋さんのことを中心に書こうと思ってます。走るのが好きです。山形県出身です。内容をちょっとづつ調整していってます。

『習得の情熱』と夏の日のプール

得難い体験がある。 自意識に酔いしれること。偉大な詩人であるかのように、言葉を紡いでいた時、それは喜びだった。 他者の評価を気にすると、詩は苦痛に満ちた。表現は陳腐で経験は未熟だった。詩は変哲も無いガラクタなようなものだったが、それは他者の…

『カバンの中の月夜』とリブレット千種店とtales of the new age

呟くような声、嘆く歌。囁くように語り出し、メロディを作る。とても単調な。Tales Of The New AgeShe Talks Silenceオルタナティブ¥150provided courtesy of iTunes 愛を忘れた私は、愛せない恋人の耳元で、おはようと歌う。快楽よりも依存に近い。抜け出そ…

『バカはサイレンで泣く』と岩瀬書店富久山店

ここは、大宮でも福島でもない。新幹線で北上する。窓際の席で息子が折り紙をしている。 体調が良くなく、身体中の神経が軋んでいる。寒気らしい寒気はない。駅で買った、缶コーヒーが美味しかった。新幹線のホームにいた駅員に、次の新幹線の発車時刻を聞い…

『ある夢想者の肖像』と誠光社

恵文社一乗寺店で店長をしていた方が、丸太町に本屋を開いた。 屋号は誠光社。お店は河原町通りと丸太町通りの交差点の近くにある。大通りから一本入った通りにあった。夕暮れとも夜とも言えない時間、その界隈は光が落ち、薄暗かった。 人通りも決して多い…

『泳ぐのに安全でも適切でもありません』とMARUZEN&ジュンク堂梅田店

形容詞なんてなくていい、とある人は言った。レトリックは世界を真実から隠している、とその人は考えているのだろうか。形容することを嫌っていた。目の前には揚げた魚がいる。三切れ。白い衣を薄くつけている。今にも崩れてしまいそうなほど繊細な輪郭は、…

『歯車』と山下書店原宿店

週末、頭が痛かった。 上京してから、偏頭痛の癖がついた。そんなに頻繁ではないが、偏頭痛の痛みは気が狂いそうになる。北側の部屋は光が遮られている。 窓の隙間からわずかに見える空は、青く澄んでいる。東京の冬の空だ。 部屋の空気が澱み、悪夢を見そう…

『長距離走者の孤独』と森の図書室

ライフスタイルの中で、書く行為、読む行為を忘れてしまうことがある。月の定例で読書会を開くことになった。2回目を28日に予定した。予定した方が悪いのだが、多くの人に予定が入っていて、誰も集まらない。誰もいないのなら一人で読書会をしてもいい。ずっ…

『オルフェオ』とエムズ書店みたけ店

ようやく、書き出せる。マジックリアリズムによる呪いが、ブログを開かせる手間をかけさせた。帰宅途中、江田駅に着いた時、リチャードパワーズのオルフェオを閉じた。はじめの45ページで、最後を想像することをやめる。表周りに書かれた説明も、推薦分も飾…

サン&リブと『おみやげのデザイン』

今週のお題「おすすめの手土産」 もう、今週のお題、行ってみたい時代は、先週のお題になったんだ。 先週へ戻りたい。手土産、というよりお土産の方が僕にとっては心地が良い。たいてい山形へ帰る時くらいしか手土産を持っていかない。でも、上京して10年経…

『ノルウェイの森』と『ノルウェーの森』

村上春樹は、僕、と言う。その主語を見つけた上野千鶴子は、男性の悪びれない二面性に嫌悪を示した。なんの本で読んだのか、もう忘れてしまった。ハルキストへ向かう途中、僕は彼女の言葉にハッとした。 僕は、文字にするとき、僕、という言葉を選ぶ。そして…

Halloween party と『CuiCuiの植物で楽しいハンドメイド』

恵比寿に会社があって、会社がイベントスペースを持っている。 Kusakanmuriという花屋もしている場所で、出版記念などもしたりする。今年の4月に出版した、『Cui Cuiの植物で楽しいハンドメイド』の著者、そのまんまだけど、Cui Cuiさんが結成5周年のHallowe…

6次元と『ポアンカレ予想』

6次元へ山形ナイトのイベントに行った 山形に関係する人がたくさんいた。 多くは庄内地方の方で、僕はぼんやりと池田久美子のことを思い出していた。池田久美子は山形県酒田市出身の陸上選手だった。彼女はすでに引退した。僕は山形県米沢市で陸上部をしてい…

書肆ひぐらしと『私の個人主義』

御茶ノ水駅のすぐそばに、日本出版販売という会社があって、新刊を全国へ流通させるためにそこへ行く。 新刊3タイトルを登録し、神保町の方へ緩やかな坂道を下る。小川町の交差点をまっすぐ進み、少し行ったところで右に曲がる。二番目の交差点を左へ曲がる…

インターネットと『スペキュラティブ・デザイン』

池袋駅から川口駅に向かう途中、ふと昔一緒に働いていた子のことを思い出した。彼女と知り合ったのは10年前だった。この10年で世界は変わった。インターネットは得体の知れないものになり、メメックスやWWWに興奮していたことさえ忘れてしまっている。 僕は…

YouTubeと『映像作家100人』

大宮まで、本屋へ、営業に行った。 うまく、時間が、使えなかった。 カバンに入れた、トーマス・マンの『トニオ・クレーガー』を電車の中で読んだ。大宮から会社へ戻る。18時を過ぎていた。会社に戻ると、『映像作家100人2015』を本棚から持ってくる。彼らの…

太陽と星空のサーカスと『星の王子さま』

息子が保育園で最後の運動会を終えた。最後の運動会だった。担任の先生に金メダルを貰った。彼はそれを一日中つけていた。昼ごはんを食べている時も、トランプをしている時も、絵を描いている時も、夜ごはんを食べている時も。 あまりにつけているので、ごは…

父親の記憶と『明るい部屋』

父親は、土建の仕事をしていた。 毎日夜遅かった。だいたいお酒を飲んで帰ってきた。今では考えられないが、みんな飲酒運転をしていた。父親は、泥臭くて、セメントくさくて、加齢臭で、タバコ臭くて、酒臭かった。臭いのない父親のことは知らない。今日、恵…

フジファブリック『若者のすべて』と川内倫子『花火』

記憶の中で一番古い花火大会は、山形県朝日町の上郷ダムの花火大会だ。その花火大会では、最後のクライマックスにナイヤガラの滝がダムいっぱいに打ち下ろされ、5尺玉が盛大に打ち上げられる。それは、お決まりだった。小学校くらいにその花火大会は終了し…

青山ブックセンター本店と『現代写真論』

青山ブックセンターへ行くのは、いつも楽しみだ。買うものを決めて伺い、買うものを買って帰る。Amazonで買えばいいじゃないか、という人もいる。でも僕はそんなもったいないことをしない。欲しい本がどこに置かれてるか、見にいく。今号の+81を買おうと思っ…

ウィークエンドのブックエンドと『THE BOOKS 365』

本が好き、と言うだけで話が止まらなくなる。金曜日、堀江敏幸さんが好き、と言われときめき、土曜日、梶井基次郎の『檸檬』が好きと言われ興奮し、吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』が好きと言われ感嘆し、エンデの『モモ』で本が好きになったと言われ…

かもめブックスと『2666』

まだ、かもめブックスができてなかった頃、『2666』を教えてくれた店員さんがいた。 かもめブックスができるタイミングで、彼女はかもめブックスに転職した。 ジャン=クロード・ペルチエ素子が、初めてベンノ・フォン・アルチンボルディ劇場に設置されたのは…

ジュンク堂池袋本店と『Processing』

2001年MITメデイアラボで、Processingは開発された、プログラミング言語であり、統合開発環境である。開発者はケイシー・リースとベンジャミン・フライの二人だった。Processingは、アーティストやデザイナーのために開発されており、難解なブログラミング言…

遅筆堂と『居ごこちのよい旅』

山形から神奈川へ帰る日、川西町にあるフレンドリープラザによった。 そこには、井上ひさしの蔵書が置かれた図書館、遅筆堂文庫がある。 5月だっただろうか。BOOK BOOK OKITAMAという本のイベントで知り合った方が働かれてる。 機会があえば伺おうと思ってい…

高校時代の思い出と『ウルトラマラソン』

山形に帰ってきた。 友人の結婚式に出ると、昔のことばかり思い出す。陸上部だったころ、毎日走っていた。学校へ行って走り、家に帰って走った。 休みの日は、部活が終わった後、よく家の近くを走った。当時は、箱根駅伝に出たくて、箱根の山を走りたかった…

石川啄木と東北、アンジェビュロー上野店

ふるさとの 訛りなつかし 停車場の 人ごみの中 そを 聴きにゆく 《石川啄木》山形へ帰ります。 上野です。 エキュートはまだ閉まっていて、誰もいない。 アンジェビュロー上野店は、アンジェの中で一番売上がいいらしい。明正堂アトレ上野店は坪単価の売上が…

メトロ書店と『Design Rule Index』

先日、長崎にあるメトロ書店---本の情報満載---Metrobooksさんのメトロニュースに稚拙な文書ですが寄稿しました。メトロ書店にはまだ伺ったことがない。噂は聞いている。先日、福岡にもご出店された。メトロニュースは各出版社の営業、編集問わず紹介づてで…

『ミナペルホネン?』と恵文社一乗寺店にまつわる京都の本屋

『ミナペルホネン?』を発売した時、京都にある恵文社一乗寺店でイベントをした。今はcottageとしてイベントスペースをしっかり作られているが、当時はまだなかった。 恵文社一乗寺店の隣にある外のスペースを使わせてもらった。 外から漏れて聞こえるバイク…

NABO.BOOKSと『よしおくんがぎゅうにゅうをこぼしてしまったおはなし』

ゴールデンウイークに家族で上田へ遊びに出かけた。 朝の早い時間に出かけたので、1日を満喫できた。上田にあるNABO.BOOKSへ行った。 もともとamazonで売っていた古本屋だったらしい。今でもamazonで本を売っている。 数年前から店舗を持ち、カフェ兼古本屋…

森岡書店と『荒野の古本屋』

山形県の集まりに出かけた。 いろんな事をしている人がいる。そんな方たちと出会い、話すだけで楽しい。今、銀座に一冊だけの本を売る本屋がある。森岡書店。 店主は山形県出身で、著書もいくつかある。 その中でも、晶文社から出ている『荒野の古本屋』が面…

大学の先生と谷崎潤一郎

今週のお題「思い出の先生」7月24日に生まれた。 芥川龍之介が自殺した日、河童忌と言われている。 アレクサンドル・デュマと吉本ばななと谷崎潤一郎が生まれた日だ。大学のとき、1クラスしか受けてなかった女性の先生に話の流れでそのことを伝えた。 へー、…