本のこと、はしること、山形県のこと。

本と本屋さんのことを中心に書こうと思ってます。走るのが好きです。山形県出身です。内容をちょっとづつ調整していってます。

『習得の情熱』と夏の日のプール

得難い体験がある。 自意識に酔いしれること。偉大な詩人であるかのように、言葉を紡いでいた時、それは喜びだった。 他者の評価を気にすると、詩は苦痛に満ちた。表現は陳腐で経験は未熟だった。詩は変哲も無いガラクタなようなものだったが、それは他者の…

『生きとし生ける空白の物語』と北緯38度線

国道113号線のすぐ近くで育った。 小学生か中学生のころだったと思う。国道113号線は、北緯38度線をなぞるように、日本海と太平洋をつないでいる、と担任の教師が言った。国道113号線は、国境になりえたのだ、と。 厳密に言えば、それは国境ではなく、軍事境…

『なぜ、人は走るのか』と高校時代

高校時代に彼女はいなかった。誰とも付き合った事は がなかった。 中学生の頃、学校のマラソン大会で1位を取った。高校へ入学してしっかりした練習をしたら、オリンピックに出れると思っていた。 陸上部に入部すると、全国区の学校だった事を知った。まとも…

『カバンの中の月夜』とリブレット千種店とtales of the new age

呟くような声、嘆く歌。囁くように語り出し、メロディを作る。とても単調な。Tales Of The New AgeShe Talks Silenceオルタナティブ¥150provided courtesy of iTunes 愛を忘れた私は、愛せない恋人の耳元で、おはようと歌う。快楽よりも依存に近い。抜け出そ…

『バカはサイレンで泣く』と岩瀬書店富久山店

ここは、大宮でも福島でもない。新幹線で北上する。窓際の席で息子が折り紙をしている。 体調が良くなく、身体中の神経が軋んでいる。寒気らしい寒気はない。駅で買った、缶コーヒーが美味しかった。新幹線のホームにいた駅員に、次の新幹線の発車時刻を聞い…

『そして誰もいなくなった』と2015年

走ること、と銘打ちながら、走ることについてほとんど書いてない。読んだ本は必ず、どこか得体の知れない想像と結びつく。まるで夢の中のように、単語と単語がタンゴを踊る。 いま、僕は上手いこと言った、と思う。走っている時も同じ。 その時のことを書き…

『飛行蜘蛛』とジュンク堂大阪本店

年末年始は帰省する。今年は雪が少ないようなので、車を運転できる。なので、車で友人の店に行くつもり。そこで、お土産を買おうと思う。山形、といえばさくらんぼ、と答える人がほとんど。山形のどこ出身?と問われると、米沢あたり、と答える。米沢牛だね…

『ポアンカレ予想』とジュンク堂天満橋店

仕事のことを考えてる。息苦しくなって、思考が止まる。頭が止まる。生きている時間から、うまくいっている時間だけを集積しても、1日に満たないんじゃないか、と思う時がある。大抵の時間は停滞の中にいる。停滞は悪いもんじゃないけど、もう少しばかり、明…

『ある夢想者の肖像』と誠光社

恵文社一乗寺店で店長をしていた方が、丸太町に本屋を開いた。 屋号は誠光社。お店は河原町通りと丸太町通りの交差点の近くにある。大通りから一本入った通りにあった。夕暮れとも夜とも言えない時間、その界隈は光が落ち、薄暗かった。 人通りも決して多い…

『泳ぐのに安全でも適切でもありません』とMARUZEN&ジュンク堂梅田店

形容詞なんてなくていい、とある人は言った。レトリックは世界を真実から隠している、とその人は考えているのだろうか。形容することを嫌っていた。目の前には揚げた魚がいる。三切れ。白い衣を薄くつけている。今にも崩れてしまいそうなほど繊細な輪郭は、…

『歯車』と山下書店原宿店

週末、頭が痛かった。 上京してから、偏頭痛の癖がついた。そんなに頻繁ではないが、偏頭痛の痛みは気が狂いそうになる。北側の部屋は光が遮られている。 窓の隙間からわずかに見える空は、青く澄んでいる。東京の冬の空だ。 部屋の空気が澱み、悪夢を見そう…

「ロッキンオン」と鹿島ブックセンター

僕は世界に数百人しかいない。もちろん、希少価値は高い。世の中には、君は世界に一人しかいない、という人がいる。 世界の人口はもうすぐ100億人になる。100億分の1の確率で僕が存在するほどの存在ではない。僕はこの世にいる数百人の僕に出会うことはでき…

『長距離走者の孤独』と森の図書室

ライフスタイルの中で、書く行為、読む行為を忘れてしまうことがある。月の定例で読書会を開くことになった。2回目を28日に予定した。予定した方が悪いのだが、多くの人に予定が入っていて、誰も集まらない。誰もいないのなら一人で読書会をしてもいい。ずっ…

『オルフェオ』とエムズ書店みたけ店

ようやく、書き出せる。マジックリアリズムによる呪いが、ブログを開かせる手間をかけさせた。帰宅途中、江田駅に着いた時、リチャードパワーズのオルフェオを閉じた。はじめの45ページで、最後を想像することをやめる。表周りに書かれた説明も、推薦分も飾…

サン&リブと『おみやげのデザイン』

今週のお題「おすすめの手土産」 もう、今週のお題、行ってみたい時代は、先週のお題になったんだ。 先週へ戻りたい。手土産、というよりお土産の方が僕にとっては心地が良い。たいてい山形へ帰る時くらいしか手土産を持っていかない。でも、上京して10年経…

『ノルウェイの森』と『ノルウェーの森』

村上春樹は、僕、と言う。その主語を見つけた上野千鶴子は、男性の悪びれない二面性に嫌悪を示した。なんの本で読んだのか、もう忘れてしまった。ハルキストへ向かう途中、僕は彼女の言葉にハッとした。 僕は、文字にするとき、僕、という言葉を選ぶ。そして…

Halloween party と『CuiCuiの植物で楽しいハンドメイド』

恵比寿に会社があって、会社がイベントスペースを持っている。 Kusakanmuriという花屋もしている場所で、出版記念などもしたりする。今年の4月に出版した、『Cui Cuiの植物で楽しいハンドメイド』の著者、そのまんまだけど、Cui Cuiさんが結成5周年のHallowe…

6次元と『ポアンカレ予想』

6次元へ山形ナイトのイベントに行った 山形に関係する人がたくさんいた。 多くは庄内地方の方で、僕はぼんやりと池田久美子のことを思い出していた。池田久美子は山形県酒田市出身の陸上選手だった。彼女はすでに引退した。僕は山形県米沢市で陸上部をしてい…

書肆ひぐらしと『私の個人主義』

御茶ノ水駅のすぐそばに、日本出版販売という会社があって、新刊を全国へ流通させるためにそこへ行く。 新刊3タイトルを登録し、神保町の方へ緩やかな坂道を下る。小川町の交差点をまっすぐ進み、少し行ったところで右に曲がる。二番目の交差点を左へ曲がる…

シューゲイザーと置賜盆地

妻の実家は、埼玉県行田市にある。 行田市は、2007年に日本最高気温を出した熊谷市に隣接する。(現在は高知県の四万十市の41℃が最高らしい。)僕の生まれた山形県南陽市は、熊谷市に破られるまでの74年間、日本最高気温を保持していた、山形県山形市の南方…

インターネットと『スペキュラティブ・デザイン』

池袋駅から川口駅に向かう途中、ふと昔一緒に働いていた子のことを思い出した。彼女と知り合ったのは10年前だった。この10年で世界は変わった。インターネットは得体の知れないものになり、メメックスやWWWに興奮していたことさえ忘れてしまっている。 僕は…

YouTubeと『映像作家100人』

大宮まで、本屋へ、営業に行った。 うまく、時間が、使えなかった。 カバンに入れた、トーマス・マンの『トニオ・クレーガー』を電車の中で読んだ。大宮から会社へ戻る。18時を過ぎていた。会社に戻ると、『映像作家100人2015』を本棚から持ってくる。彼らの…

太陽と星空のサーカスと『星の王子さま』

息子が保育園で最後の運動会を終えた。最後の運動会だった。担任の先生に金メダルを貰った。彼はそれを一日中つけていた。昼ごはんを食べている時も、トランプをしている時も、絵を描いている時も、夜ごはんを食べている時も。 あまりにつけているので、ごは…

妻と『ブッタの言葉』

今週のお題「結婚を決めた理由」中学生の頃だったと思う。初恋の女の子が好きな男の子は、彼女といい関係になっていた。けれど、彼女にライバルが現れ、違う女の子に彼を取られた。彼は優しくて二枚目で運動が出来て頭が良かった。 たまたま、文化祭か何かだ…

父親の記憶と『明るい部屋』

父親は、土建の仕事をしていた。 毎日夜遅かった。だいたいお酒を飲んで帰ってきた。今では考えられないが、みんな飲酒運転をしていた。父親は、泥臭くて、セメントくさくて、加齢臭で、タバコ臭くて、酒臭かった。臭いのない父親のことは知らない。今日、恵…

フジファブリック『若者のすべて』と川内倫子『花火』

記憶の中で一番古い花火大会は、山形県朝日町の上郷ダムの花火大会だ。その花火大会では、最後のクライマックスにナイヤガラの滝がダムいっぱいに打ち下ろされ、5尺玉が盛大に打ち上げられる。それは、お決まりだった。小学校くらいにその花火大会は終了し…

青山ブックセンター本店と『現代写真論』

青山ブックセンターへ行くのは、いつも楽しみだ。買うものを決めて伺い、買うものを買って帰る。Amazonで買えばいいじゃないか、という人もいる。でも僕はそんなもったいないことをしない。欲しい本がどこに置かれてるか、見にいく。今号の+81を買おうと思っ…

いか文庫と『永遠の詩 03山之口貘』

いか文庫は、エア書店で本当は本屋は実在しない。でも店員は実在する。阿佐ヶ谷にある、よるのひるね、でいか文庫は不定期に詩のイベントを主催している。 もっとイベントはたくさんやってる。ただ、僕は行ったことがまだない。よるのひるねにしか行ったこと…

ウィークエンドのブックエンドと『THE BOOKS 365』

本が好き、と言うだけで話が止まらなくなる。金曜日、堀江敏幸さんが好き、と言われときめき、土曜日、梶井基次郎の『檸檬』が好きと言われ興奮し、吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』が好きと言われ感嘆し、エンデの『モモ』で本が好きになったと言われ…

かもめブックスと『2666』

まだ、かもめブックスができてなかった頃、『2666』を教えてくれた店員さんがいた。 かもめブックスができるタイミングで、彼女はかもめブックスに転職した。 ジャン=クロード・ペルチエ素子が、初めてベンノ・フォン・アルチンボルディ劇場に設置されたのは…